博士前期課程生活文化学専攻

生活文化学専攻について

目的

生活文化学専攻は、豊かで安定した生活を希求する人間の文化的・社会的特性と生活環境との関連を研究・教育することを目的とします。

専攻の概要

本専攻は、旧人間環境学専攻生活文化学コース、生活経営福祉学コースを統合して設置されました。両コースにおける研究・教育の主題は相互に重なりを持っており、この統合によって文系の生活学領域を担う唯一の専攻となりました。生活環境学部における生活文化学科での研究・教育内容をさらに発展・深化させ、より高度な研究能力と知識をもつ人材の養成を目指しています。

研究指導について

授業科目は社会学(家族、ジェンダー、福祉など)、経済学(消費、生活領域)、文化人類学、社会心理学、歴史学、法学など多彩な学問領域に広がっています。本専攻では複数指導教員制を採っていますので、主任指導教員と履修計画をよく相談してください。以下に履修モデルを示しますが、ぜひ本専攻の学際性を活かして自由に構想してください。

生活環境学部の紹介ページ

 生活文化 モデルコース

人と人の関係、人とモノとの関係、この両者を包み込む文化や環境との関係を、わたしたちの日々の暮らしの視点から考え、研究を進めます。日常的な生活の営みの結果として現れる各種の人間関係・技能・工芸・美術・環境や、これらを規定している文化・社会規範を研究対象とし、方法論的には比較文化史、風俗文化 (史)学、文化人類学、社会学、社会心理学など、多様なアプローチを組み合わせて展開します。

主な科目:生活史論、比較人間関係論、比較生活人類学、家族社会学、ジェンダー・家族論、服飾文化論

生活システム モデルコース

私たちは生命というレベルでも生活というレベルでも資源を消費してアウトプットを生み出すオープン・システムとして存在していることは明らかです。この履修モデルでは「消費」をキーワードにして社会科学的方法論を用いて生活管理領域とその福祉のあり方に関して学際的研究を行うコースです。すなわち、生活資源の配分と管理について考究し、生活の豊かさと福祉などの生活課題に対して、個人と社会がどのように関わり合い、運営されていくかについての実態把握と制度的分析を行います。

主な科目:消費行動環境論、消費者法制度論、生活経済システム論、福祉社会学、生活リスク管理論

教育理念

21世紀の社会を取巻く諸問題に対して、生活文化という視点から課題を発見し、解決できる人材を養成します。

男女共同参画、環境保護、高齢化、少子化など、現代の生活に関わる課題は極めて多様です。本専攻では社会科学と人文科学にまたがる教育カリキュラムを用意し、日常の身近なところから問題を掘り起こす課題発見能力、諸問題の複雑な相互連関まで含めて明らかにする論理的分析力、研究を現実社会への提言に結びつけることのできる応用力をあわせ持った、真に社会に貢献できる人材の育成に努めます。

求める学生像

生活文化学専攻では、家庭生活を中心とする人間的スケールから生活環境のあり方を考えるということに、強い興味と関心を持つ学生を求めています。社会科学、人文科学の分析視角を創造的に融合させることによって、身近な「世界」の中に、新たな認識・知識を発見していくことに対して意欲的な学生を、文系・理系を問わず歓迎します。

修了生の進路について 

修了生の進路としては、国家・地方公務員などの行政領域(一般行政職、家裁調査官等)、中学・高等学校教員、地域団体の女性リーダー、各種企業の企画・消費者・福祉部門、シンクタンクなどへの進出が期待されます。後期課程に進学して大学・短大・研究所などの教員や研究者を目指す人も多数います。

さらに研究を希望される方は:博士後期課程社会生活環境学専攻・共生社会生活学講座へ。

授業科目を紹介します

●比較生活人類学:佐野敏行
日常生活における行動様式と文化の研究を行うための文化人類学的な基本知識について、文献を読み、比較の視点を使いながら討論する。

●比較生活人類学演習:佐野敏行
生活および文化に関する演習参加者全員に共通して課せられた課題について、自らが選んだ研究例から、毎回のテーマに関して話題提供をし、それをもとに討論する。

●生活史論:鈴木則子
日本の生活文化の特性について、身体の歴史を通じて論ずる。具体的にいくつかの疾病をとりあげて、それをめぐる排除と共生の歴史について論ずる。

●生活史論演習:鈴木則子
日本の売買春運動に関する著作の輪読を行う。毎回担当者を決めて報告させ、全員でその内容について議論する。

●生活リスク管理論:野田 隆
生活をとりまく「リスク」について、社会学がどのように考えるのかを文献を読みながら考える。

●生活リスク管理論演習:野田 隆
Fone,M & Young,P.C. “Public Sector Risk Management”を読む。

●ジェンダー家族論:松岡悦子
家族とグローバル化に関する文献を読み、ディスカッションを行う。テキストとして”Global Woman: Nannies, Maids, and Sex workers in the New Economy”by B. Ehrenreich & A. Hochschildを予定しているが、受講生との相談の上、変更の可能性もある。

●ジェンダー家族論演習:松岡悦子
人のリプロダクション(妊娠・出産・不妊・中絶など)に関する文献を読み、発表する。受講者はその内容に関してディスカッションを行う。

●比較法文化史:三成美保
アジアや欧米(とくにドイツ)との比較を通して、ジェンダー主流化の歴史と現状について検討する。「セクシュアリティ」「親密圏」「ケア」に焦点をあてるが、テーマに関してとくに希望があればそれを尊重する。

●比較法文化史演習:三成美保
20世紀のドイツ法文化と日本法文化を比較する。ジェンダー視点から、とくに家族法システム(家族法・労働法・社会保障法など)の比較に焦点をあてる。必要に応じて、アジアや欧米の現状とも比較する。

●比較人間関係論:安藤香織
最新の文化心理学・社会心理学の研究の動向を知るため、1年以内に発刊された論文の輪読を行う。受講者が各自で関心のある論文を選択して読み、レジュメを作成して発表する。

●比較人間関係論演習:安藤香織
社会心理学の知見を用いて、女性の生き方に関連する問題について考える。前半では文献の購読を行い、後半では各自がインタビュー調査、質問紙調査の案を考え、実施する。レポートではそれぞれの調査結果をまとめる。

●家族社会学:井口高志
家庭内の営みは、家族関係の変化やその現在を捉えるための手がかり(指標)となる。この授業では、参加者の関心のある領域(食事、育児、家事など)を取り上げて、それに対する様々なアプローチの研究を読む。

●家族社会学演習:井口高志
アンペイドワークという観点から家事労働や家庭内の性別分業を捉え直す。ただし、受講者の人数や顔ぶれなどを見てテーマや購読文献などについては適宜調整する。

●消費者法制度論:大塚 浩
法はわれわれの生活世界の諸相にいかなる仕方で係ってくるのか、われわれはその際法をどのように取り扱いうるのか、さらには、あるべき法秩序はいかにして構築されうるのかという観点から、現代の大衆消費社会固有の問題と法とのかかわりに関して、文献を輪読する。

●消費者法制度論演習:大塚 浩
無数に発生するさまざまな法的紛争の処理のために、司法制度をはじめさまざまな仕組みが用意されている。その概要を学んだ上で、さらに我々の社会における紛争解決のシステムが十分に機能しえているのか否かに関して、消費者法分野を中心に批判的な検討を加える。

●表象文化論:山崎明子
生活文化に関する諸研究において必要となる表象分析の方法と、具体的な視覚文化の解釈の基礎研究を学ぶ。

●表象文化論演習:山崎明子

●消費経済学:青木美紗

●消費経済学演習:青木美紗

●生活文化学特別研究:各教員
人間の生活や生活文化に関する課題の発見から、課題解決のためのデータや資料の収集、分析、考察、結論の提示までの一連のプロセスを、学生一人一人の問題意識に応じて個別に指導し、修士論文を完成させる。

修士論文(人間文化研究科 博士前期課程 生活文化学専攻:平成20~25年度)

●平成29年度

中国における生育政策の展開と女性の生活実態
-女性たちの語りから-
三成研究室
奈良市で働く中国人研修生の実態調査 松岡研究室
Cross-cultural marriage and family in modern Japanese society
-A qualitative study of Japanese and East-European couples-
井口研究室
現代中国の占いをめぐる状況
-重慶市の調査を中心に-
松岡研究室
中国における被災者に対する「こころのケア」への公的支援のあり方に
関する研究
井口研究室
中国における婚姻法改正と夫婦財産制度
-司法解釈(三)を中心に-
三成研究室
インドネシア映画と日本映画の中の男女像
-『Perempuan Berkalung Sorban』と『青い山脈』の分析から-
山崎研究室
インドネシアの西ジャワにおけるRebo Nyundaプログラムと文化的アイデンティティの形成
-バンドン市の学校における実践を中心にして-
佐野研究室
中国の20代の若者の家族形成に関する意識の考察 松岡研究室
母子家庭の母親に対する「自立」支援の現状と課題
-母子家庭等就業・自立支援センターへの聞き取りから-
三成研究室
ヨーロッパにおける魔女裁判と女性嫌悪
-『魔女の槌』(1485年)を中心に-
三成研究室
子どもの性的虐待の犯罪化と今後の課題
-2017年刑法改正をめぐって-
三成研究室
Online Lolita Communities of Argentinean women and Japanese pop culture 佐野研究室
中国の三無老人の実態調査
-五保戸扶養制度に注目して-
井口研究室
大学生の主観的幸福感と友人関係についての研究
-日本人学生と中国人学生の比較から-
安藤研究室
在日中国人女性の生活実態の考察
-中国人女性の日本での産後ケア、子どもの言語継承を中心に-
松岡研究室
育児を取り巻く現状と「乳児家庭全戸訪問事業」の意義
-A市における訪問事業実施者と訪問家庭の認識に着目して-
松岡研究室

●平成28年度

北朝鮮におけるリプロダクション
-生殖をめぐる個人と国家-
松岡研究室
中国と日本の幼児教育の比較 松岡研究室
藍染工芸からみる非物質文化遺産と博物館
-中国における近年の動きに着目して-
佐野研究室
慢性の痛みを抱えて生きるとは
-線維筋痛症者の語りの分析から-
井口研究室
現代中国における都市部の留守児童問題について
-親へのインタビュー調査を中心に-
松岡研究室

●平成27年度

成年被後見人の選挙権回復と今後の展望
-成年後見制度の改革へ向けて -
大塚研究室
二人目の出産をめぐる親の子ども観
-中国山東省での調査を中心に-
松岡研究室
中国遼寧省における老親扶養の現状
-家族戦略の視点から-
井口研究室
高齢者福祉施設における介護者のジェンダー
-中国四川省での調査を中心に-
井口研究室
発達障害の子をもつ母親の障害認識の変容
-母親の語りに着目して-
井口研究室
アメリカにおける婚姻概念の変容と性中立化
-同性カップルの法的保障をめぐる合衆国最高裁判決を中心に-
三成研究室
ノルウェー社会における男性の育児参加
-パパクオータ制度をめぐって-
三成研究室
中国都市部における家政服務員の従業実態
-北京市でのインタビュー調査を中心に-
井口研究室
宝塚歌劇団に見られる日本の家父長制
-欧米のフェミニズム演劇と比較して-
松岡研究室
女性による農村起業と支援体制
-持続的なビジネスの可能性を目指して-
大塚研究室
中国における同性愛者の形式婚の現状と課題
-インタビュー調査に基づいて-
松岡研究室
中国人女子留学生を通してみる日本の就職活動
-調査報告書の分析と留学生へのインタビューを中心に-
松岡研究室
日本と台湾の女性地方議員の比較 松岡研究室
政治・経済分野におけるポジティブ・アクション
-意思決定過程への女性の参加をめぐって-
三成研究室
幕末・近代日本における売薬業の展開と民衆意識
-カタカナ売薬「ウルユス」「ホルトス」「テルメル」の分析から-
鈴木研究室
中国におけるスティグマを負うHIV・AIDS当事者の問題経験と対処戦略 井口研究室
個人、メディア、政府の相互作用の視点から微博における
議題設定についての考察    -「临武小商人致死案」を事例として-
野田研究室
少女マンガにおける「男装少女」からみる男性性と女性性
-『リボンの騎士』をめぐって-
山崎研究室
The Representation of Niijima Yae in the 2013 NHK Taiga drama
‘Yae no Sakura’as seen from a gender perspective
松岡研究室

●平成26年度

「いのちの選別」をめぐるポリティクス
-1970年代の優生保護法改正をめぐる攻防-
三成研究室
「母親規範からの逸脱」と女性のカテゴリー化
-子をもつ性風俗産業従事者の聞き取り調査から-
三成研究室
中国都市部における一人っ子世代と親世代の扶養・介護意識の現状
-武漢市でのインタビュー調査をもとに-
井口研究室
中国における性の知識の獲得とリプロダクティブ・ヘルス
-性教育を中心に-
松岡研究室

●平成25年度 修士論文目録( 計:2論文)

「中国における同性愛者のカミングアウトについて」(松岡研究室)
「Experiences of Brazilian and Peruvian Children and their Parents:School Life, Family Life and Community Life in Japan」(佐野研究室)

●平成24年度 修士論文目録 (計:10論文)

「赤穂緞通の文様研究-文様の独自性形成過程と犬と松のイコノロジー-」( 山崎研究室)
「愛護と管理の法-動物法の展開と課題-」( 大塚研究室)
「中国における妊娠・出産の実態調査-80后女性の出産体験より-」(松岡研究室)
「食品行政と法システム-生肉提供禁止決定過程の分析から-」( 大塚研究室)
「変化する上海の衣生活におけるチーパオのあり方 」(佐野研究室)
「中国女性の海外就労をめぐる考察-奈良市技能実習生のケースから見る-」(松岡研究室)
「中国における児童誘拐・人身売買をめぐる現状-被害者家族へのインタビューをもとに-」( 阿部研究室)
「中国における社会的企業に関する研究-社会的企業を育成、定着させるために必要な諸条件に関する一考察-」( 阿部研究室)
「食料消費購買行動に関する日台中の比較分析」( 加茂研究室)
「調理技術の向上に役立つ営みと食への関わり合い方-料理教室と婦人サークルの参加者を対象にして-」( 佐野研究室)

●平成23年度 修士論文目録( 計:8論文)

「夫婦の家事・育児分担の実態と妻の不公平感-日本と台湾の事例より-」(松岡研究室)
「国際結婚における移住者の結婚生活に関する研究-日本に居住するウイグル人と日本人の結婚事例を中心に-」(松岡研究室)
「現代家族における「家」の継承-島根県出雲地方の聞き取り調査をもとに-」(松岡研究室)
「中国における高齢者福祉施設の課題-介護労働者の専門化を中心に-」(阿部研究室)
「中国80后女性の専業主婦志向-西安市の調査より-」(松岡研究室)
「日系企業における中国人女性の労働状況-上海市を中心に-」(松岡研究室)
「中国・日本における母親の育児不安の規定要因とソーシャルサポートの効果-未就学児を持つ働く母親を対象に-」(安藤研究室)
「近代化中国における80后の結婚観-大連市の調査より-」(松岡研究室)

●平成22年度 修士論文目録 (計:3論文)

「中国における救援組織の災害対応行動の調査研究-地方緊急救援隊を事例に-」(野田研究室)
「四川地震における新聞の災害報道に関する研究-四川日報を素材として-」(野田研究室)
「長崎丸山遊女の研究-藤家文書の分析と遊女観について-」(鈴木研究室)

 ●平成21年度 修士論文目録 (計:6論文)

「中国における「民工潮」にみえる社会問題-西安農村地域の父親不在の「留守児童」の生活実態調査から-」(清水(新)研究室)
「中国農村における若年層女性の自殺問題-自殺遺族へのインタビュー調査を中心に-」(清水(新)研究室)
「現代的中日国際結婚と家庭生活に関する調査-元留学生へのインタビューを中心に-」(清水(新)研究室)
「江戸時代前期における書籍の出版状況-書籍目録からの考察-」(清水(哲)研究室)
「結婚式における貸衣装の実態とその意識-日本と台湾の比較を通して-」( 岩崎研究室)
「自発性の捉え方と日本人の活動における現れ方-今後の成長のあり方を理解するために-」(佐野研究室)

●平成20年度 修士論文目録 (計:4論文)

「近代日本女性洋装史における看護服ー明治中期に誕生した看護婦養成機関の開設当初の服装を中心に-」(岩崎研究室)
「江戸時代における家庭教育-頼春水・梅颸夫妻の教育から-」(鈴木研究室)
「日本における里親制度の現状と課題-「施設対里親」からの脱却-」(清水(新)研究室)
「DV家庭で生きる子どもたち-学校現場での対応を探る-」(清水(新)研究室)